「宇宙人と旅してくれないか」 予想したこともなければ、予想もできないお願いを受けたのは、20歳の誕生日の翌日だった。 「…は?」 「お前ももう新成人。社会に対して責任もあれば、親への感謝がそろそろ生まれてきて、お父さんの少々無茶なお願いも聞いてくれる歳になってきたことだろう」 そいつは、本来であれば自分で気づかなければならないことを、育てる人間の立場から恥ずかしげもなく口にした。 「いやいや、わけわかんないんだけど。あたし、やりたいことあるし」 大学は一週間前から夏休み。課題は夏休みに入る前に終わらせてしまって、毎日ギターを片手にカリスマたちの作品をなぞり、気が向けば自分の思いを口ずさむ日々を過ごしている。やりたいことも、やらなければならないこともとくにはないが、他人に言われて行動を決められたり制限されたりすることは好きではない。 今も手に持っていた6本の金属が和を奏でた。 だが、ふと。 「…宇宙人?」 素朴で当たり前な疑問が、ひとつぽかんと頭に浮かんだ。眉をひそめて、真面目な顔をしている父親の顔を見る。 「なにそれ」 「つまり、こういうことだ」 この後、にわかに信じられない話が始まる。 -2020 04 07 アザナ- |