俺の人生、今のところただ1つの目標は、

モテたいことだった。

自覚はあるんだ。俺はホレっぽい。単純に顔やスタイル、あるいはちょっとした仕草が気に入れば、即、恋に落ちる。彼女の全てが欲しくなる。・・・もとい、その前に、彼女を独り占めしたくなる。
だから俺が惚れた彼女に次にとる行動は、回り道なんかない。
世間話? アプローチ? わざと消しゴム落として、拾ってもらって、それをきっかけに仲良く?
そんなじれったいことしていられない。
俺の場合、即告白。好きだ。一言。俺と付き合ってくれ。その二言。
この間、最短で30秒。
唐突な愛の言葉は、当然、すんなりと受け入れてもらえない。即座に断りの言葉をくらうことなんてしょっしゅうだ。それでも中には、戸惑いながらOKをくれる女の子もいる。かといって上手くいくかと言えばそんなわけがなく、二日後迷った挙句にくれる言葉はいつも同じ。「やっぱり、ごめんなさい」。
こんなことの繰り返しばかりで、俺も少しは考え、学習した。つまるところ、向こうは俺のことを好きになるヒマなんかないわけだ。だから、告白するまでに間をおいて、タイミングを図れば解決の道は見えてくるはずなのだ。
・・・と頭では判った。それでも俺の見切り発車を止めることは誰にもできない。
好きになれば、その勢いが消える前に、俺の唇は脳みその命令を無視してストレートな気持ちをつむいでしまう。
なんてことだ。せっかく原因が判明したのに、これはない。
そこで俺はさらにこう考えるようになった。
そうだ。
俺が相手を好きになる前に、俺のことを好きになってくれる子がいればいいんだ。
電光のような素晴らしいアイデア。
それが俺の頭に閃いたのは、俺の告白していない女生徒がクラスにひとりもいなくなってしまった高校一年生の冬だった。
そして、俺は今、春への扉を潜り抜けようとしていた。


「す〜がたっ」
学年の移り変わりと共に場所が変わった下駄箱。
そこにやや古びてきた革靴をしまい込んでいると、聞き慣れた俺を呼ぶ声が聞こえた。
「ジュン。オス」
「姿、クラスは? クラスは?」
笑顔で長身に似つかわしくなくはしゃいでいる男は、須方 純也(スガタ ジュンヤ)。高校入って一年生で同じクラスになり、初日の自己紹介の直後から仲良くなった。何故か。とても単純だ。俺の名前は、前島 姿(マエジマ スガタ)。なんと俺の下の名前とジュンの名字が一緒ってわけだ。それに感動して話しかけたのは同時で、気もなかなか合うしで仲良くなった。それにしても世の中は狭い。いや、広いのかな。
「B組。お前と同じだって春休みにメールしただろ」
「いやいや俺たちってなかなかアレだね〜」
「アレて何だよ」
「あっはは、日本語でなんて言うのかな」
・・・なんて嘯くのは、奴が純血の日本人ではないからだ。人並み以上に高い鼻。180超える長身。深めの彫り。俺はおそらくイラン辺りの血が混じっているんじゃないかと予想つけているが、本人が語ろうとしないので謎は解けない。とはいえ。
「お前は生まれたときから日本だろうが」
「バレちゃ仕方ない」
とくに落ち込むでも悪びれるでもなくジュンは肩を竦める。
それにしてもと俺は思う。
俺の目標は、春休みに立ててきた。モテたい。以上。
しかしジュンはと言えば、その目立つ容姿と人懐っこさで、その願いは簡単に叶えられる。
それに引き換え俺は、「かわいい」と言われなくはないが、平均以下の身長に人並みの容姿。二重まぶたの典型的日本人顔。
この差。
なんてことだ。
神様は意地悪だ。
何度か、そう呟いた。
だがそのうちに思い立った。
そうだ。ジュンのあの容姿は、ジュンのお陰じゃない。ヤツの両親の恩寵である。つまりヤツは何も努力して勝ち得たわけじゃないんだ。
そう考えて気が楽になったものだ。
同時に、客観的な俺が囁いた。
俺って、一人で悩むことは多いけど、何でか根暗な悩み方しねーよな・・・
常に、俺の頭はうるさいくらいの音量で思考を繰り返す。
それも言葉がマシンガンのように流れているから不思議だ。
だからだろうか。・・・俺に、見切り発車が多いのは。
一人、そう考えながら、ジュンとの会話に適当にあいづち打ちながら、着いた先は二年B組の教室だった。





作中にも使った言葉で表現させていただきますが、見切り発車の小説第一話!
あともさきも何も考えずに勢いで書き上げた小説。続くのか!?
とりあえずもうすぐ女の子を登場させる予定だけはあります。いけー!!
・・・お騒がせします。

-2010 03 17 アザナ-




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